2017/02/14
三年目358
「いーたーだーきーます」
「いーたーだーきーます」
チョコです。
今日はチョコです。
幽々子様とチョコを食べました。
「バレンタインみたいね」
「幽々子様、バレンタインなんですよ」
今年のチョコ担当は清掃の方々です。
念入りな作戦会議を重ね、出来上がったものがこのチョコらしいです。
見た目はいかにもなチョコ。
なんの飾り気もありません。
「これはどういうことなのでしょうか」
「妖夢、なにもわかっていないのねえ」
「幽々子様!」
幽々子様はわかる女でした。
「幽々子様、作戦に作戦を重ねたあの清掃グループの方々が作ったのがこのいかにもなチョコです。
どういうことなのでしょう」
「バランスよ。カセさんたちはバランスを壊したのよ」
壊したようです。
「チョコの魅力が10だとするわね?」
「10だとします」
「見た目に気を取らわれて、見た目7、味3のチョコをどう思うかしら」
「駄目です。チョコは見た目も大事ですが味も大事です」
「Y子さんはこのバランスを保つのが上手いわ。見た目5、味5のものも、少し偏って味6、見た目4のものも作れる」
「Y子さんの料理は見た目ですら美味しいですもんね」
「そしてこの問題作。見た目は1よ、妖夢」
「まさか」
「そう、カセさんたちは見た目を犠牲にして見た目1、味9のバランスぶち壊しチョコを私たちにぶつけてきたのよ!」
「な、なんですって!」
本日のおやつ
・バランスぶち壊しチョコ
「じゃあこれ、もうほんとに美味しいのでは」
「そのはずよ!」
幽々子様と二人、おそるおそるチョコを口に入れました。
「あふん」
「ほいひい」
幽々子様があふんといって倒れました。
気持ちはわかります。
これはあふんといって倒れられるチョコです。
まわりは苦目のチョココーティング、中は甘めのミルクチョコレート、しかも、しかも。
「洋酒でしょうか……じっとりと舌に絡んできます」
「洋酒を入れてチョコと舌を仲良しにさせる役目をさせているのね。しかもそのお酒じたいも美味しいわ」
「幽々子様、これはもしや」
「ええ、これは最高よ」
最高でした。
これは最高なのです。
最高のチョコなのです。
噛み締めました。
ゆっくりと噛み締めました。
そこから言葉はいりません。
だって、今はチョコを味わう時間なのだから。
私と幽々子様を温かい目で見るY子さんの笑顔が、お母さんみたいでした。
今年のバレンタインも楽しかったです。